転職が珍しくない欧米ほどではありませんが、それでも長引く不況の中で、日本でも会社の倒産やリストラによって転職を余儀なくされる人が増えると共に、積極的に中途採用する企業も増えています。従前どおりの新卒一括採用の傾向は根強いものの、企業側に新しい人材を一から教育している余裕がないという、苦しい台所事情もあるのです。
また仕事にやりがいを見いだせなかったり、現状のままでは正当な評価を受けられないといった不満から、積極的に転職に動く人も少なくありません。その場合には中途採用で即戦力を期待されるのが通常であるため、これまでの仕事と同業種あるいは密接に関連する範囲内での転職が多いといえます。
しかし社会人経験がありながら、例えば専門学校に入り直すなどして、全く違う業種に転向してしまう、いわゆるキャリアチェンジを実現することもあります。すんなりと初めからその業種に就いて、経験を重ねる場合と比べれば、一定のハンデがありますが、これまでの経験の中に共通していたり応用できるキャリアがあったり、あるいはむしろ強みとなるようなキャリアを積んでいる場合も少なくありません。また早い段階でのキャリアチェンジであれば、長い仕事人生の中でそれほど大きな差にはならないものです。
そこでキャリアチェンジを成功させるために、まずは自分の好き嫌いを考えることが大切です。「好きこそ物の上手なれ」といわれますが、興味や好奇心は重要です。今の業務における好き嫌いや、自分自身の長所や短所、そして自分の興味や好奇心の対象などをよく考えて、そこからどんな仕事がしたいのか、理想の仕事とは何か、と考えを進めてみましょう。例えば過去に経験した業務で楽しかったこと、あるいはつまらなかったことを具体的に思い出して、何が楽しかったのか、また何がつまらなかったのかを、考えてみることです。
次に今ある業種の中で、自分がやりたいと思える仕事の選択肢として、具体的にどのようなものがあるのかを、ネット上の情報も活用して調べてみましょう。求人情報サイトだけではなく、ネットワークを広げて友人や知人からの情報を参考にすると、給与や仕事内容がリアルに分かります。そして自分の興味や技能に合っているのか、自分の強みやこれまでの経験を活かすことができるか、あるいは一日のタイムスケジュールや仕事の流れがどのようなものか、そして必要とされる資格や経験など、様々な観点から注意深く検討しなければなりません。他業種ということから最低限身に付けておかなければならない知識やスキルなどがあれば、それを習得する時間も必要です。そのため目標を定めて、スケジュールを立てることが大切です。
異業種へのキャリアチェンジは、通常の転職以上に慎重に考えなければなりません。まずは今の仕事で不満な点を、転職以外の方法で解決できないか考えましょう。どうしてもキャリアチェンジするのであれば、リスクを理解しておく必要があります。それはすなわち金銭的・時間的にコストが掛かる上に、転職後に収入が下がるリスクや、能力が未知数であるリスク、そして人間関係を新たに築き直すリスクや新たなストレスに晒されるリスクの他に、年齢的なリスクもあります。
いくらエンジニアが人材不足とはいえ、稼げるフリーランスには特徴があります。フリーランスは良くも悪くも自分次第であり、客観的に自己分析できなくては、クライアントとの良好な信頼関係を築くことは難しいのです。そして自分の市場価値を考えて、売り込み方を知っており、環境の変化を先取りするなど市場価値を高める努力を怠りません。危機感も強く、エンジニアであっても一つのプログラミング言語に満足せず、複数習得して守備範囲を広げる備えをしています。
せっかく苦労して就職したというのに、若者が早々に会社を辞めてしまうという嘆きがあちこちで聞かれます。しかしその中でも「石の上にも3年」で、20代後半にもなれば、社会人としての基礎は身に付き、これからのキャリアを腰を据えて考える時期でしょう。仮に同業種ではなく、他業種への挑戦というキャリアチェンジを考えるのであれば、この20代後半までがチャンスです。というのもその先になると結婚や子育てや親の介護など、様々な環境の変化もあり、また体力的にも年齢的にも難しくなるからです。