学生から社会人になる上で、どのような企業に就職するのかを決めるのも、大きな決断です。しかしこの時期には、仕事の内容や業界の事情もあまり知らないのが通常であり、そのためか大学を卒業して入社しても、3年以内に退職してしまう若者が、3割に上るというデータもあります。
最近ではこのような離職率の高さを改善しようと、インターンシップを積極的に採り入れる企業も増えています。若者の早期離職理由としては、厚生労働省の「平成25年若年者雇用実態調査」によれば、「労働時間・休日・休暇」に対する不満がトップであり、いわゆるブラック企業に就職してしまった若者が含まれることが示唆されます。
このような勤務条件に対する不満の場合、社内の異動や同業種内における転職で解決することもあれば、業界全体として長時間労働が常態化しているために、どこの会社に就職しても同じであることもあります。しかしいざ就職して実際の職務に就く中で、同業種への転職に留まらず、キャリアチェンジを図るという決断を下す場合には、それ相応のリスクがあることを理解しておく必要があります。
ともあれ20代半ばになれば、最初に就職してから3年以上が過ぎており、そろそろ業務内容にも慣れて、自分の将来設計を具体的に思い描くことができる年頃です。しかしその一方で目の前にある仕事に追われて、大きく自分のキャリアを捉えることができなくなっているかもしれません。そろそろ後輩に指導をする立場にもなって、今一度ここでじっくりと、上司との関係や社内における自分のポジションやキャリアアップを考えることが大切な時期です。これからの人生では、結婚したり子供ができたり、あるいは親の介護など、仕事以外にも環境の変化が起こります。そのような中でも、自分のキャリアをしっかりと見据えて、能力の向上に努めながら、チャンスを活かして活躍の場を広げることが大切です。
そして同業種ではなく、異業種で勝負しようと考えるのであれば、20代がその時期です。まだまだ体力的にも年齢的にも若く、新たな業種で挑戦するにも融通が利きます。その一方で社会人経験は既にあるため、即戦力として期待されるのが通常であり、そのため同業種内での転職以上に深く掘り下げて考える必要があるでしょう。
焦ってキャリアチェンジを実行に移す前に、自分がなぜその業種に挑戦したいのか、また本当にその業種に自分は適しているのか、など、自分自身に厳しく問いかけてみることです。まずは自分のどんな能力がその業種で役立つのか、またそれはどのように役立つのか、を説得力のある言葉で表現してみましょう。
異業種へのキャリアチェンジは、通常の転職以上に慎重に考えなければなりません。まずは今の仕事で不満な点を、転職以外の方法で解決できないか考えましょう。どうしてもキャリアチェンジするのであれば、リスクを理解しておく必要があります。それはすなわち金銭的・時間的にコストが掛かる上に、転職後に収入が下がるリスクや、能力が未知数であるリスク、そして人間関係を新たに築き直すリスクや新たなストレスに晒されるリスクの他に、年齢的なリスクもあります。
いくらエンジニアが人材不足とはいえ、稼げるフリーランスには特徴があります。フリーランスは良くも悪くも自分次第であり、客観的に自己分析できなくては、クライアントとの良好な信頼関係を築くことは難しいのです。そして自分の市場価値を考えて、売り込み方を知っており、環境の変化を先取りするなど市場価値を高める努力を怠りません。危機感も強く、エンジニアであっても一つのプログラミング言語に満足せず、複数習得して守備範囲を広げる備えをしています。
せっかく苦労して就職したというのに、若者が早々に会社を辞めてしまうという嘆きがあちこちで聞かれます。しかしその中でも「石の上にも3年」で、20代後半にもなれば、社会人としての基礎は身に付き、これからのキャリアを腰を据えて考える時期でしょう。仮に同業種ではなく、他業種への挑戦というキャリアチェンジを考えるのであれば、この20代後半までがチャンスです。というのもその先になると結婚や子育てや親の介護など、様々な環境の変化もあり、また体力的にも年齢的にも難しくなるからです。