キャリアチェンジを含めて、転職するために必要なのは、まず企業側の求人に応募して、書類審査を通過することです。ごく小規模の企業で、応募書類を送れば誰でも面接する、あるいは単純に早い者勝ちという例もないわけではありませんが、通常は忙しい業務の合間を縫って、人事担当者や現場の人が応募書類に目を通しています。もちろん採用する側も、数枚の書類と短時間の面接だけで、相手が本当に求める人材かどうかなど分かるわけがないのは、百も承知です。その上で、少なくとも人物を判断する上で最低限チェックすべき点を基に、篩にかけているのです。
求人を出す企業側にとって、応募者は多数に上り、その一人一人にそれほど時間を掛けていられる余裕はありません。そのため応募書類の審査は、一人せいぜい数十秒から1分程度であり、決め手は書類全体から受ける印象と言っても過言ではありません。つまり一見して「読みづらい」と思わせてしまうようでは、書類審査の通過は覚束ないのです。
書類審査のための応募書類としては、履歴書と職務経歴書に送付書を添付するというのが一般的です。中には履歴書のみという場合もあるかもしれませんが、転職の場合には即戦力が期待されることが多いため、求人企業側としても応募者が業務の中でどのようなスキルや知識を習得し、どのような経験を積み重ねてきたのか、という経歴には興味のあるところでしょう。
しかし実際にはまず応募者が作成した書類から、その職務経歴を読み解く他ないのであって、たとえ同じ経歴であっても、求人企業に対するアピールの度合いは、いかに読み手のことを考えて書いているのかという点に、大きく左右されることになります。この相手の立場に立って考えるということは、ビジネス上大切な要素です。職務経歴書というのは、自分を売り込むための企画書であり、最初の数行で相手の興味を掴めるかどうかが勝負です。
そこでこれまでの経歴を概括する最初の数行は、事実だけをシンプルに述べます。そしてその次には、時系列でこれまでの経歴を並べます。ここでは5W1Hすなわち「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、した」という具体的な記述を心掛けましょう。抽象的な記述では、読んでいてもイメージしづらいものです。そして自己PRには、求人企業が何を求めているのか、を理解して記載することが大切です。大抵の求人情報には、どのような立場でどのような業務のためにどのような人材を必要としているのか、といった求める人物像があります。あるいはその企業をネット上などで調べてみると、どのような事業展開を進めているのかも分かります。
異業種へのキャリアチェンジは、通常の転職以上に慎重に考えなければなりません。まずは今の仕事で不満な点を、転職以外の方法で解決できないか考えましょう。どうしてもキャリアチェンジするのであれば、リスクを理解しておく必要があります。それはすなわち金銭的・時間的にコストが掛かる上に、転職後に収入が下がるリスクや、能力が未知数であるリスク、そして人間関係を新たに築き直すリスクや新たなストレスに晒されるリスクの他に、年齢的なリスクもあります。
いくらエンジニアが人材不足とはいえ、稼げるフリーランスには特徴があります。フリーランスは良くも悪くも自分次第であり、客観的に自己分析できなくては、クライアントとの良好な信頼関係を築くことは難しいのです。そして自分の市場価値を考えて、売り込み方を知っており、環境の変化を先取りするなど市場価値を高める努力を怠りません。危機感も強く、エンジニアであっても一つのプログラミング言語に満足せず、複数習得して守備範囲を広げる備えをしています。
せっかく苦労して就職したというのに、若者が早々に会社を辞めてしまうという嘆きがあちこちで聞かれます。しかしその中でも「石の上にも3年」で、20代後半にもなれば、社会人としての基礎は身に付き、これからのキャリアを腰を据えて考える時期でしょう。仮に同業種ではなく、他業種への挑戦というキャリアチェンジを考えるのであれば、この20代後半までがチャンスです。というのもその先になると結婚や子育てや親の介護など、様々な環境の変化もあり、また体力的にも年齢的にも難しくなるからです。